採用サイトは、企業の魅力や働く環境を伝えるために自由な表現ができる一方、内容によっては求人情報としての法的な責任も伴います。応募数を増やしたいという思いから表現を優先しすぎると、求職者に誤解を与えたり、実際の労働条件との乖離が生まれたりしかねません。職業安定法や男女雇用機会均等法など、採用サイトの制作時に注意すべき法律は複数存在します。
本記事では、法律に抵触しやすいNG表現と実務で使える言い換え例を、関連法ごとにまとめました。
採用サイトのNG表現が法律違反につながる理由
採用サイトのNG表現に該当する多くのケースは、企業側に差別や誇張の意図がなくても発生します。
求職者は、書き手の意図ではなく、表現をどう受け取るかを基準に応募の可否を判断するため、対象を絞り込んでいるように読める書き方や、実態とズレのある書き方は、意図せず法律に抵触するリスクを持ちます。重要なのは意図の有無ではなく、受け取られ方を基準に表現を見直す視点です。
どのような表現が該当するかは、次の項目から法律ごとに解説します。
職業安定法に抵触する採用サイトのNG表現と言い換え例

職業安定法は、求人情報を正確かつわかりやすく示すことを企業に義務付けており、採用サイトに掲載する内容もこの対象となります。実態と異なる表示や誤解を招く書き方は、法律違反につながる可能性があります。
労働条件を誇張・美化した表現
「残業ゼロ」「必ず年収アップ」「フルリモート」といった表現は、応募者の目を引きやすい一方、実態と乖離していれば職業安定法違反となる恐れがあります。
「残業ゼロ」であれば、繁忙期の対応まで含めて実態を確認したうえで「月平均残業時間10時間(前年度実績)」のように具体的な数字を示す書き方に変えましょう。「必ず年収アップ」も、昇給を保証しているわけではない場合は「評価制度に基づき昇給あり」といった表現が適切です。「フルリモート」も条件付きであれば「リモート勤務制度あり(条件あり)」と明記します。
数字や条件を添えることで、求職者からの信頼性も高まります。
曖昧で判断材料に欠ける表現
業務内容や給与、勤務地を抽象的な表現にとどめると、求職者が応募を判断するための材料が不足し、職業安定法が求める的確な表示に反する可能性があります。
たとえば「営業関連の業務」ではなく「法人向けIT製品の新規開拓営業」のように、具体的な業務内容を明記しましょう。給与についても「経験に応じて優遇」だけでなく、想定年収や月給の目安を示すことが望まれます。
就業場所や雇用形態、試用期間の有無なども、求職者が入社後をイメージできる程度まで具体化することが、誤解のない採用サイトづくりにつながります。
労働条件の変更範囲が明示されていない表現
2024年4月の職業安定法施行規則改正により、採用サイトや求人票には、入社直後の業務内容や就業場所だけでなく、将来的な変更の範囲も明示することが求められるようになりました。
「一般事務」とだけ記載するのではなく、「(変更の範囲)●●部門への配置転換の可能性あり」のように示す必要があります。就業場所も「本社勤務」に加え、転勤の可能性があれば変更範囲を併記します。有期雇用契約の場合は、契約更新の基準や通算契約期間・更新回数の上限も示すことが必要です。
この改正は比較的新しい内容のため、既存の採用サイトが対応できていないケースも見られます。
男女雇用機会均等法に抵触する採用サイトのNG表現と言い換え例

男女雇用機会均等法は、労働者の採用における性別を理由とした差別を禁止する法律です。採用サイトでは、意図せず対象を性別で絞り込んでいるように見える表現がNGとなる可能性があります。
職種名や募集要項で性別を限定する表現
「ウェイトレス」「看護婦」「営業マン」といった性別を連想させる職種名は、実際の業務内容と直接関係がなくても、応募対象を性別で絞っているとの誤解を招きやすい表現です。
こうした呼称は「ホールスタッフ」「看護師」「営業職」など、性別を含まない名称に置き換えましょう。また「男性限定募集」のように募集要項で直接性別を指定する表現も、原則として禁止されています。
性別に関わらず「性別不問」と明記し、業務内容や求める人物像で訴求する書き方に切り替えることが求められます。
学歴や応募条件を性別で使い分ける表現
募集要項に記載する応募条件を、性別によって異なる基準で設定することも、男女雇用機会均等法に抵触する代表的なケースです。
たとえば「男性は大卒以上、女性は高卒以上」のように学歴の基準を性別で書き分けている場合、能力とは無関係な性別による選別とみなされます。応募条件は性別に関わらず同一の基準を設ける必要があります。
年齢や経験年数などの条件も同様に、性別による差を設けず、業務遂行に必要な要件として一本化した書き方に整えましょう。
女性歓迎や男性歓迎など一見配慮に見える表現
「女性歓迎」「男性歓迎」という表現は、応募者への配慮のように見えても、原則として性別による採用差別と判断される可能性があります。
企業側に差別の意図がなくても、求職者からは応募対象を性別で絞っているように受け取られるためです。
ただし、男女間の実質的な格差を是正する目的で行うポジティブ・アクションについては、例外的に認められる場合があります。この例外に該当するかどうかの判断は難しいため、安易に「歓迎」表現を使うのではなく、性別を明記しない書き方を基本とすることが望ましいでしょう。
労働施策総合推進法に抵触する採用サイトのNG表現と言い換え例

労働施策総合推進法は、採用における年齢を理由とした制限を禁止するとともに、職場におけるハラスメント防止措置を事業主に義務付けています。採用サイトの表現も、年齢を絞り込むものやハラスメントを助長するものは避ける必要があります。
直接的に年齢を限定する表現
「20代限定」「若手限定募集」といった表現は、応募条件として年齢に制限を設けているとみなされ、労働施策総合推進法に違反する可能性があります。
年齢を明示するのではなく、「20代の社員が多く在籍しています」「若手からベテランまで(20代から60代)の幅広い年代の社員が活躍しています」のように、社内の実態を伝える表現に置き換えましょう。年齢を絞り込む意図がなくても、こうした言葉は求職者の応募をためらわせる要因にもなります。
間接的に年齢を絞り込んでしまう表現
年齢そのものを明記していなくても、実質的に対象を絞り込んでいると受け取られる表現には注意が必要です。
「体力に自信のある方限定」という書き方は、若年層のみを想定しているとの誤解を招きやすい表現の一つです。業務内容が理由であれば、「重量物の運搬業務があるため、業務遂行に必要な体力を要します」のように、具体的な業務内容を根拠として示す書き方に変えることで、年齢による選別ではないことを明確にできます。
ハラスメントを助長しかねない働き方を強調した表現
「体育会系」「厳しい指導で鍛えます」といった社風を強調する表現は、意欲を伝える意図であっても、パワーハラスメントを連想させる職場環境として受け取られる可能性があります。
労働施策総合推進法では事業主にハラスメント防止措置が義務付けられているため、採用サイトの表現がこの姿勢と矛盾しないよう配慮が必要です。厳しさを伝えたい場合も、「目標達成に向けた実践的な研修制度あり」のように、具体的な制度や成長機会として言い換える方が、求職者に誤解なく伝わります。
労働基準法に抵触する採用サイトのNG表現と言い換え例

労働基準法は、賃金や労働時間、休日といった労働条件の最低基準を定めた法律です。正社員に限らず、パートやアルバイトを含むすべての雇用形態に適用され、この基準を下回る内容を採用サイトに掲載すると、法律違反とみなされる可能性があります。
固定残業代を実態と異なる形で表示する表現
「月給25万円(残業代込み)」のように、固定残業代を基本給と分離せずに表示する書き方は、労働基準法上のトラブルにつながりやすい表現です。
固定残業代を採用する場合は、「基本給20万円+固定残業代5万円(20時間分、超過分は別途支給)」のように、基本給と固定残業代の内訳、対象となる時間数、超過分の扱いを明確に示す必要があります。内訳を示さない表示は、実際の残業時間が想定を超えた際に未払い賃金の問題を引き起こす原因にもなります。
有給休暇や休日を実態と異なる形で表示する表現
「完全週休二日制」と記載しながら実態はシフト制で週によって休日数が変動する場合や、有給休暇の取得実績を偽って掲載する場合は、実態との乖離が生じ、求職者に誤解を与える表示となります。
休日制度は「完全週休二日制(土日)」のように曜日や条件を明確にし、有給休暇についても「年間平均取得日数〇日」のように実績に基づいた数値を示すことが望まれます。実態を正確に伝えることが、入社後のミスマッチや早期離職を防ぐことにもつながります。
労働時間・休憩に関する法定基準を下回る表現
労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています。
「休憩は業務の状況により変動」といった曖昧な表現は、法定基準を満たしているかどうかが求職者に伝わらず、不安を与える要因になります。休憩時間は「休憩60分(12:00〜13:00)」のように具体的な時間帯を明記し、法定基準を満たしていることが伝わる書き方に整えましょう。
まとめ
採用サイトは、自由な表現ができる媒体であると同時に、内容によっては求人情報として法的な責任を伴います。
職業安定法では労働条件の正確な表示が、男女雇用機会均等法では性別による差別的表現の排除が、労働施策総合推進法では年齢制限やハラスメントを助長する表現の回避が、労働基準法では法定基準を満たした労働条件の表示が、それぞれ求められます。
意図の有無にかかわらず、求職者がどう受け取るかという視点を持ち、実態に基づいた具体的な表現を用いることが、法律違反を避けるとともに、求職者との信頼関係を築くことにもつながります。
