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ECサイトのリピート率とは?計算の仕方と向上させる方法を解説
ECサイトを運営していると、新規顧客を集めても売上が安定しないと感じることは少なくありません。そんなときに注目したいのがリピート率です。リピート率は売上の安定や向上に直結する重要な指標です。
この記事では、リピート率の基本から計算方法、業界別の平均値、下がる原因や向上させる方法までを分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
ECサイトのリピート率とは
ECサイトにおけるリピート率とは、一度購入した顧客が、もう一度購入した割合を示す指標です。
たとえば、1月に初めて購入した顧客が100人いて、そのうち30人がその後もう一度購入していれば、リピート率は30%となります。
リピート率を確認することで、再購入がどの程度発生しているかを把握できます。
どれだけSEOやSNSで新規顧客を増やしても、その多くが一度きりで終わってしまえば、売上は毎月ゼロから積み上げ直しになり、売上が安定しません。一方で、一度購入した顧客が継続的に購入してくれれば、少ない新規獲得でも売上が積み上がり、事業を安定して成長させやすくなります。
またリピート率は、ECサイトや商品に満足してもらえているかを測る指標にもなります。再購入が多いということは、それだけ顧客が価値を感じている証拠です。
新規顧客を増やすだけでなく、選ばれ続けるECサイトになるために、リピート率を定期的に確認し、改善していくことが大切です。
リピート率の計算の仕方
リピート率は、次の計算式で求めることができます。
リピート率(%)= リピーター数 ÷ 新規顧客数 × 100
たとえば、新規顧客数が1,000人で、そのうち200人が再購入していれば、リピート率は「200 ÷ 1,000 × 100」で20%となります。
この計算式を使えば、自社のリピート率を簡単に把握でき、ECサイトの売上の安定や向上につながる対策を検討することができます。
業界別に見た平均リピート率
リピート率は業界ごとに大きく異なります。
適切な目標値を設定するには、まず自社の数値を把握し、業界全体の平均と比較することが重要です。以下は、通販CRMラボのECサイトの平均リピート率は?の記事を参考にした主要業界の平均的なリピート率です。
ECサイト全体 | ECサイト全体の平均リピート率は約15~18%とされています。これは、購入後に特別なフォローを行っていない場合の数字です。 購入後のフォローを徹底しているECサイトでは、リピート率が30~40%まで向上すると言われています。 |
健康食品・化粧品業界 | 健康食品や化粧品を扱うECサイトでは、リピート率が約50%とされています。 これらの商品は消耗品であり、定期的な購入が必要となるため、リピート率が高くなる傾向があります。 |
アパレル業界 | アパレル業界の平均リピート率は約35%です。 一度購入した顧客がブランドに満足すれば、継続的に利用してもらえる可能性が高いのが特徴です。 ブランド力の高いアパレルではリピート率が約50%になる場合もあります。 |
スーパーマーケット | スーパーマーケットでは、食品や日用品といった定期的に購入される商材を扱うため、リピート率は約30~50%と高い水準にあります。 ただし、商品によってリピート率にばらつきがあります。 |
家電業界 | 家電業界のリピート率は約25%程度と低めです。 これは、パソコンやテレビ、洗濯機といった高額商品が中心で、頻繁に購入する必要がないためです。 |
旅行業界 | 旅行業界のリピート率は約45%と高い水準にあります。 次回の手続きが簡略化されることや会員登録による利便性が理由の一つです。 |
インテリア業界 | インテリア業界の平均リピート率は約25~35%です。 一度購入すると長期間使用する商品が多く、購入頻度が低くなるからです。 |
自社のリピート率が業界平均を下回っている場合は、課題を洗い出し、後述する対策を行うことが重要です。また平均以上であっても、現状に満足せず改善を続けることで、より安定した売上基盤の構築につながります。
ただし、業界データはあくまで参考値です。最終的な判断は自社の状況を踏まえて考えましょう。
リピート率が下がる原因
リピート率が下がってしまう背景には、一つの要因だけでなく複数の要素が絡んでいます。ここでは、ECサイトのリピート率が下がる原因を解説します。
買って良かったと感じてもらえなかった
リピート率が下がる最大の要因の一つが、顧客が「この商品を買って良かった」と感じられなかった場合です。初回購入は広告や価格の魅力で後押しできますが、2回目以降は信頼や満足感がなければ再購入されません。
たとえば、写真と実物の印象が大きく異なっていたり、期待していた効果が得られなかったり、梱包が雑で開封時の印象が悪かったりすると顧客は再購入をためらいます。
つまり、一度購入してもらうことより、その後も購入したいと思ってもらえる体験を提供することが重要です。商品の品質はもちろん、商品ページの正確さ、梱包・発送スピードなど、購入体験全体のクオリティを高めることでリピート率の低下を防げます。
季節が影響している
扱っている商材によっては、季節要因で需要が大きく変動し、それがリピート率低下につながる場合があります。たとえば、夏物衣服は夏が終わると需要が急落しますし、花粉症対策商品は春先に需要が集中します。
このようなケースでは、商品の満足度や品質に問題がなくても、単純に「買うタイミングがない」ためリピートが発生しないのです。そのため、季節商材では需要が高い時期にリピーターをできるだけ多く獲得し、閑散期は関連性の高い別商材に顧客を誘導するなど、計画的な対策が欠かせません。
単にリピート率が落ちたと見るのではなく、季節変動という前提を踏まえて指標を解釈することが大切です。
キャンペーンが影響している
割引やセールなどのキャンペーンは一時的に購入を増やせますが、やり方を誤るとリピート率を下げる原因になります。初回購入だけ極端に安い価格設定にすると、安いから買っただけという層が増え、定価では購入してもらえず一度きりで離脱してしまいます。
たとえば、通常価格が5,000円の商品を初回1,000円で販売すると、実際に気に入っていても、「次回は高いからやめておこう」と感じさせてしまいがちです。短期的な購入数だけでなく、商品価値やサービス内容で再購入したくなる理由をつくることが重要です。
値引きではなく、会員限定特典や次回使えるクーポンなど、継続的な購入を前提とした対策に切り替えるのが効果的です。
リピートを促す対策を行っていない
どれほど満足度の高い商品でも、購入後に何もアプローチしなければ顧客は自然に離れていきます。購入後のフォローやリマインドを一切していないと、「また買ってほしい」という意思表示が伝わらず、他社に乗り換えられてしまう可能性が高まります。
たとえば、使用感をヒアリングするメールやレビュー投稿の依頼、次回購入で使えるクーポンの発行、定期購入プランの案内など、購入後すぐに再購入のきっかけをつくる仕組みがなければ、リピーターは育ちません。
一度満足してもらえた顧客ほど、きっかけさえあれば再購入してくれる可能性が高いので、購入後のフォローの有無がリピート率に直結します。
リピート率を向上させるメリット
リピート率を高めることは、売上だけでなく、ECサイト全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、リピート率を向上させるメリットを紹介します。
売上を安定させて着実に向上させられる
リピート率が高まると、売上を毎月ゼロからではなく、継続的に積み重ねられる状態をつくれます。
一度購入した顧客が継続的に買い続けてくれることで、新規顧客の増減に左右されにくい売上基盤が築かれます。さらに、リピーターが増えれば増えるほど、毎月の売上に上乗せされるリピーターの割合が大きくなり、前年・前月を上回る売上を達成しやすくなるのです。
こうして、安定性を高めながら売上を継続的に成長させられる収益構造を築けるのが、リピート率向上の最大の魅力です。
ECサイトの品質が高まる
リピート率を上げるためには、商品そのものの品質だけでなく、ECサイト全体の品質を高める取り組みが欠かせません。
たとえば、商品情報の正確さや在庫管理、見やすく整ったページ構成、スムーズな決済と配送、丁寧で迅速なカスタマー対応など、あらゆる要素がECサイトの品質を形づくります。こうした改善を継続して行うことで、顧客から信頼される高品質なECサイトへと成長できます。
結果として、リピーターが安心して利用し続けられるだけでなく、新規顧客から見ても品質の高いECサイトとして選ばれやすくなるのです。
レビューを効率よく集められる
リピーターは、商品やブランドに愛着や信頼を持っていることが多いため、レビューや口コミを自発的に投稿してくれる確率が高くなります。レビューは購入を迷っている顧客にとって非常に影響力が大きく、数が多いほど購買意欲を後押しします。
リピート率が高まってリピーターが増えるほど、レビューが自然に蓄積され、広告費をかけずに新規顧客の購入率を高められるという好循環をつくれます。さらにレビューを分析すれば、商品の改善点や顧客が重視している価値も見えてくるため、マーケティングにも役立ちます。
集客にかかる手間とコストを抑えられる
新規顧客を集めるには広告費、SNS運用、SEO対策など、常に労力とコストがかかり続けます。一方でリピーターは、追加費用をかけずに売上を生み出してくれる存在です。
リピート率が上がることで売上に占める既存顧客の割合が高まり、少ない新規獲得でも安定した売上を維持できるようになります。その結果、集客にかけていた予算や人員を商品開発・接客品質・在庫管理など、利益率を高める領域に再配分できるため、事業全体の効率が向上します。
マーケティングデータを収集できる
リピーターが増えると、同じ顧客が複数回購入してくれるため、顧客ごとの購買データが蓄積されていきます。
たとえば、「どの商品をどの間隔で購入しているか」「どんな組み合わせで買う傾向があるか」といった情報を分析することで、再購入の最適なタイミングでのアプローチや、好みに合った商品提案が可能になります。
これらのデータは、在庫計画や新商品の企画にも活用できるため、単なるリピートの促進にとどまらず、事業戦略全体の精度を高める資産となります。
つまり、リピート率向上は、売上の向上だけでなく意思決定の質を高める効果もあるのです。
リピート率を向上させる方法
リピート率を高めるには、ただ商品を販売するだけでは不十分です。一度買ってくれた顧客に「またここで買いたい」と思わせるきっかけや仕組みを計画的に設計することが欠かせません。ここでは、ECサイトのリピート率を向上させる方法を紹介します。
ポイント制度を導入する
ポイント制度は、「貯めたポイントを使いたい」「損をしたくない」という心理を活かして、再購入を自然に促す仕組みです。
購入金額に応じてポイントが付与されると、顧客は「せっかくなら次も同じショップで買ってポイントを貯めたい」と考えるようになります。さらに、ポイントが積み重なっていくことで、そのECサイトに親しみや愛着を感じやすくなり、継続的に利用してもらいやすくなります。
このようにポイント制度は、リピート率を高めるうえでも効果的な対策の一つです。一度買って終わりではなく、繰り返し利用してもらえる関係づくりに役立ちます。
リピータ―向けのキャンペーンを開催する
既存顧客だけを対象にした特典キャンペーンは、「自分は特別な存在だ」と感じさせることで再購入の意欲を高める効果があります。
たとえば、会員ランク制による特典、限定セール、送料無料、サンプルプレゼントなどが代表的です。さらに、新商品の先行販売や限定販売など、ここでしか得られない体験を提供すると、他社では得られない優越感が生まれ、長期的な定着につながります。
このような対策はリピート率の向上に直結するため、既存顧客を継続的に育てるうえで非常に効果的です。一度購入してくれた顧客を優遇する姿勢は、顧客ロイヤルティを高める強力な手段です。
クーポンを配布する
クーポンは、今使わないと損と感じさせ、次回購入の動機をつくるのに非常に効果的です。
特に「購入後○日以内に使える○%OFFクーポン」など期限付きクーポンは、再購入のタイミングを早めるのに適しています。メールや同梱チラシ、マイページなど複数の配布経路を活用すれば、押しつけ感なく自然に再購入を促すことができます。
特にクーポンは、初回購入者のリピート率を高めるきっかけとして効果的です。
メルマガを配信する
メルマガは、定期的に顧客と接点を持ち、ブランドを思い出してもらうための基本的な対策です。
新商品の案内や季節の特集、再入荷情報、お得な情報などを届けることで、購買意欲を持続させられます。また、購買履歴に基づいたパーソナライズ配信を行えば、興味関心にマッチした提案ができるため、開封率・購入率も上がります。
継続的な接点をつくるメルマガは、リピート率を高めるための効果的な手段であり、一度離れた顧客を呼び戻すきっかけにもなり、休眠顧客の掘り起こしに効果的です。
アフターフォローを充実させる
アフターフォローは、購入後の満足度を高めて信頼を築き、再購入につなげるうえで非常に重要です。
商品が届いた後に、「使い方」「お手入れ方法」「活用アイデア」などを伝えるメールを送れば、商品価値を最大限に感じてもらえるようになります。さらに、トラブルや問い合わせに対して迅速かつ丁寧に対応することで、顧客に安心感と信頼感を与えられます。
このような取り組みはリピート率の向上に直結し、満足と安心を提供することが「またここで買いたい」と思われる土台になります。
分析結果から購入体験を改善する
リピート率を上げるためには、勘や経験ではなく、データに基づいて課題を特定し、改善するサイクルを回すことが欠かせません。
たとえば、購入間隔・離脱率・レビュー内容・顧客属性などを分析すれば、どの段階で再購入が途切れているかを可視化できます。その結果をもとに、商品品質の見直しや商品ページの改善、配送・在庫管理の体制強化などを行えば、購入体験の質が向上し、リピート率の底上げにつながります。
継続的な分析と改善は、長期的に競合と差をつけるための土台になります。
リピート率に関するよくある質問
リピート率はECサイトにおいて重要な指標ですが、定義や目安、改善の考え方などで迷う人も多いものです。ここでは、リピート率に関するよくある質問と回答を紹介します。
リピート率とリピーター率はどう違う?
リピート率とリピーター率は、どちらも再購入に関する指標ですが、計算の考え方が異なります。
リピート率は、ある期間に初めて購入した顧客のうち、その後もう一度購入した顧客の割合を示します。計算式は「リピート率(%)= 再購入した顧客数 ÷ 初回購入顧客数 × 100」です。
一方、リピーター率は、ある期間に購入したすべての顧客のうち、その期間内に2回以上購入した顧客の割合を示します。計算式は「リピーター率(%)= 期間内に2回以上購入した顧客数 ÷ 期間内に購入した顧客数 × 100」です。
どちらも再購入の動きを見るうえで重要な指標ですが、リピート率は期間をまたいだ再購入、リピーター率は同じ期間内で複数回購入という違いがあります。混同しないように使い分けましょう。
リピート率はどれくらいあれば良い?
リピート率は業種や商材によって異なるため、一概に何%以上が良いとは言えません。たとえば、消耗品や定期購入型の商品は50%前後と高めですが、家電や家具など購買頻度の低い商材は20%前後でも十分優秀です。
大切なのは、自社の数値がどうかを検討しながら、少しずつ改善していくことです。また、短期的な変動ではなく、中長期で安定して上がっているかを見ることが重要です。
リピート率が低いときは何から改善すべき?
リピート率が低いときは、まず再購入が起きない理由を特定することから始めましょう。
具体的には、購入後アンケートやレビュー内容を確認し、商品品質やサービスに不満がないかを調べます。あわせて、離脱率や購入間隔などのデータを分析すれば、どの段階で顧客が離れているかを把握できます。
原因が見えたら、「顧客満足度の向上対策 → 再購入を後押しする仕組み」という順で取り組むのが効果的です。やみくもに対策を打つよりも、課題に合わせた改善を行う方が成果につながりやすくなります。
リピート率だけを上げれば成果は高まる?
リピート率は重要な指標ですが、それだけを上げても必ずしも成果が高まるとは限りません。
たとえば、極端な値引きやコストをかけすぎた対策でリピート率を上げても、利益が残らなければ事業は成長しません。また、既存顧客だけに注力しすぎると新規顧客が増えず、長期的な売上規模が頭打ちになるリスクもあります。
大切なのは、新規獲得とリピート率をバランスよく組み合わせて、全体の収益構造を最適化することです。
まとめ:ECサイトのリピート率を高めて売上の安定化を図ろう
ECサイトで安定した売上を築くためには、新規顧客を集め続けるだけでは限界があります。獲得した顧客をいかに継続的に購入してもらうか、つまりリピート率を高められるかが、収益基盤の強化に直結します。
リピート率は一度上がったら終わりではなく、定期的に計測し、改善を積み重ねていくことが大切です。小さな工夫でも、顧客の満足度を高めて再購入につながれば、その積み重ねがやがて大きな売上につながります。
今日からできる対策を一つずつ実践し、リピート率を着実に引き上げていき、短期的な売上に振り回されず、安定して成長できるECサイトを目指しましょう。